「読解力の低下」はポピュリズムを呼び込む

OECD国際学力調査

OECD経済協力開発機構が世界各国の15歳の子どもの学力を測定した国際学力調査の結果がまとまりました。結果はどうだったのでしょうか。

去年2018年の調査です。今回は、79の国と地域からおよそ60万人が参加して、「数学」「科学」「読解力」の3つの分野を測定しました。日本では、今の高校2年生が1年生の時に受け、およそ6100人が参加しました。

「数学」「科学」はなんとか10位以内に入っておりましたが、読解力に課題があるとされていて、前回の調査でも順位を4つ下げて8位でした。そのため、今回の結果がどうなるかは、教育関係者の間でも大きな関心を集めていた経緯があります。気になる読解力の結果は、504点。順位は15位となり、さらに7つ下がりました。

読解力に課題があるのは、日本の教育システムそのものが、読解力が育ちにくいものになっているからだという指摘があります。日本の学校では、教科書を使って機械的に回答を導き出す方法を教えていくというのが一般的です。逆に言うと、教え方が正解を導く形から抜け切れていないというわけです。一方、読解力というのは、一つの文章を読んでもAという見方もあればBという見方もあるといった様々な考え方を許容することから身につくものとされています。

NHK解説委員西川龍一氏

読解力が強化されれば、多様な情報の中から選別し、嘘の情報を見つけて自分の意見をまとめる力がつくのです。つまり、ポピュリズムの誘惑に毒されない力が得られるのです。歴史をたどればわかるように、独裁はポピュリズムから出発しています。日本人がそれに弱いと言われるのは、元をただせば読解力の低下にあるのではないでしょうか。

多様な情報へのアクセス、情報活用能力が不足する原因は意外なところにもあります。

スマホ偏重、SNSでの文章の短縮、情報を手軽に扱う風潮も警戒しなくてはなりません。スマホ偏重はPCによる多様な情報を処理する能力や大量情報処理の能力を著しく落とす結果となっています。

若者の間でスマホさえあればPCに頼らなくても良いとしてPCを持たない傾向が増えております。それにPCを持っていてもトラブルシューティングが出来ず、設定の方法もわからず、十分に使いこなしていない例が多く見られます。多様な文章を読む、大量な文章を読む力がなければこれからの複雑化した社会で生きていくことは難しくなるでしょう。

例をあげればきりがないが、米中貿易戦争、ブレグジットの行方、世界の金融崩壊、日本の景気下落、自民党の混乱、等々。真剣に取り組むほど解が遠ざかる。結局何もわからないのです。しかし分からないでは済まされないのがこれからの社会での生活です。

どうしたら良いかは個々人で考えるしかありません。多様な情報に接して自分の頭で考えることしかないでしょう。そのためにも読解力が必要になります。AIでは読解力に基づく判断力は満たされません。言うまでもなく「AIに出来ないことをこなす力」が、次世代に生きるための必須条件となります。今回の国際調査機関の学力調査で日本が読解力15位に転落したことは大変残念なことで、産業の競争力、先端技術の開発力にとっても大きなマイナスだと考えます。

スマホでゲームに興じ、TVで芸能番組しか見ない若者を大量生産し、思考力を失い、型にはめ込む日本の教育を根本的に見直す必要があるのではないでしょうか。

年末は24日(火)の投稿を27日(金)に変更し、1月7日まで休ませていただきます。新年のご挨拶は1月8日となります。