電気料金が、限りなくゼロ円に近づき化石燃料を凌駕するようになったらどうなるのか考えてみたことがあるだろうか?

実は、世界はこの方向を向かって走りつつあるのです。太陽発電パネルが中国などの量産効果で償却費がKw当たり1円~2円に下がっているのです。従って電気料金はすでにドバイでは2.7円/kwh、同じく、メキシコ3.9円、チリ3.2円と信じられない様な価格となっているのです。

上記は、日照時間と強烈な日光、あるいは風力に恵まれた国の話ではありますが、世界の標準値で云っても10年前と比べて自然エネルギーの価格は太陽光発電で11%に低下、風力で30%に低下しているのです。残念なことにこの面では日本はガラパゴスで、大幅に立ち遅れてしまっているのです。

化石燃料に多くを依存している日本はこのままでは、産業の競争力も当然落ち込んでしまい、CO₂の放出量も抑えられません。この点については末尾の金子勝教授と飯田哲也氏の対談をご覧いただけば詳細が掴めるのではないかと思っております。

ただし、今からでも遅くはないのです。日本は蓄電池の研究開発において世界をリードしております。太陽光・風力は出力変動が大きいと云う欠点があります。この欠点をカバーすればベースロード電源の地位を獲得できるのです。

EV(電気自動車)の蓄電池は今のところリチュウムイオン電池が主流です。リチュウムは希少物質でチリなど産地が限定され、すでに中国はじめ各国で争奪戦が始まっております。しかしながらEVにはリチューム電池以外には適切な選択肢はなく、エネルギー密度の向上、安全性の向上、製造コストの低減など開発と量産化を進める必要があります。

自然エネルギーの出力変動を如何にして平準化するかがエネルギー革命の肝であることはよく知られていますが、具体的な解決策についてはあまり触れられておりません。以下新型蓄電池の開発・量産化の現状を述べて情報共有を進めたいと考えます。

1.リチューム電池の全固体化の動き

2.ナトリュームイオン電池の開発

3.水素発電

4.超微小電池の開発

この4項目につき概略ですがご説明いたします。大型蓄電装置のついては先の投稿で「レドックスフロー電池」(エネルギー密度が小さいので大型プラント向きです)をとりあげておりますので参照してください。

1.希少材料であるリチュウムを如何にして効率的に活用するか、安全性と量産設備を如何にして向上させ、コストを下げるかが課題となります。この視野から考えると、現在のところ最も有望な選択肢は「全樹脂電池」だと云えます。

全樹脂電池は製造工程が従来とは全く異なり、活物質の粉末を電解液に混ぜ込んだペースト状の材料を樹脂フイルムに塗り、そのフイルムをセパレーターと共に積層すると云う構造です。

特徴としては量産設備が大幅に簡素化され、設備投資額が従来の10分の1となること、安全性が高く発火原因となる短略は例えばくぎを打っても生じにくい、希少金属を含む活物質の回収が容易となりリサイクルが可能となるなど数々のメリットがあるのです。これが、量産化に一番近い分野でしょう。

2.ナトリュームイオン電池についてはNAS電池が硫黄を使用したため火災事故を起し安全性に不安がありましたがその後、改良が加えられ安全性は飛躍的に改善されました。リチュウムのような希少金属を使用しないためコスト競争力が圧倒的に有利です。ナトリュームイオン電池はまだ本格量産までは若干距離があります。

3.水素発電は大きく分けて3通りあります。混焼:天然ガスとの混合燃焼方式、専焼:水素だけを使う、分子構造に水素を含むアンモニアなどを使う、この3っです。

コージェネシステムなどすでに実用化され、普及は比較的早く他の蓄電に比べ一時有力視されてはおりましたが、近年CO₂の問題とコスト面で競争力が疑問視されております。遠隔地の自然エネルギーを液体水素として海上輸送する事例を過去の投稿でご紹介したことがありました。

4.自然エネルギーとの関係は直接ないかもしれませんが、エネルギー密度の向上や集積技術など全固体蓄電池の開発との相乗効果は見逃せません。超微小電池の開発は近年目を見張る進歩を見せ注目すべき分野となっております。バイオニック医療(エレクトロニクスを活用してセンシングした情報で身体の機能を高める)の分野が超微小電池のおかげで飛躍的に広がりつつあります。

ペースメーカー、人工すい臓、人工内耳、人工網膜、義手・義足などです。電池の改良は着実に進み、従来型の10分の1の大きさで左心室内に留置できるリードレスも実用化されています。またインスリンポンプの開発は人工すい臓に近い段階まで開発が進んでおります。超小型電池の特徴を活かした典型的な事例では「排泄IoT」と呼ばれる分野もあり自動化が困難とされた介護分野にまで広がってくる可能性があるのです。将来的には体内に埋め込まれた微小蓄電池に体外から非接触充電を行い、電池取り換えのため無駄な手術を無くすことも可能となります。


蓄電池の開発と共に、自然エネルギーのストーリーは以前にも触れましたが、マイクログッリッド(エネルギーの地産地消)を抜きにしては語れません。今回は具体的事例をあげて説明いたします。

宮古島や岩手県の宮古ではすでにマイクログリッドを実現しております。宮古島では蓄電設備はそれほど進んでいるとは思えませんが、余剰電力で湯を沸かし大きなタンクに貯湯し各戸に供給するといった一見、単純ではあるができることからまずやるという現実的な対応をしております。(表記の図表と写真を参照してください)

マイクログリッドは市民ファンドと市民の共同作業、市民の協議から成り立つのです。この意味で民主主義の実践の場として地方分権にもつながります。
また、エネルギーの地産地消は、電気料金の低価格化で農業・漁業・林業などの新しい形をもたらします。そして、ご当地物産は地方財政の改善に寄与します。

太陽光発電パネルの圧倒的な需要に支えられた量産効果と、リチューム電池の全固体化を中心とした蓄電池のエネルギー密度の画期的向上に支えられ世界は100兆円に及ぶ化石燃料(世界の総需要は200兆円)を電気エネルギーに置き換えてしまう方向に向かっております。目に見えたCO₂の削減効果は環境問題の改善となり、自然エネルギーの積極的取り込みなくして企業は成り立たなくなるでしょう。

最後に金子勝先生と飯田哲也氏の動画に移りますが、このような政治的課題は単に学者や専門家の「悲憤慷慨」に依存するのでなく、野党の議員の皆さんがもっと勉強して真剣に担うべき課題だと思うのです。希望のある将来展望を明確に示せないところに日本の野党の弱点があるのではないでしょうか。その場限りのポピュリズムからいい加減、脱却しなければ将来はありません。

上の図表は世界主要国のGDPの伸び率をIMFとOECDが予測したものです。日本の成長率が世界の主要国に比べていかに低いかに注目。

新年の投稿はエネルギー問題とする予定でしたが、緊急事態発生のためテーマを変更しました。

年末から経済雑誌の2020年予測特集を読み漁りましたが、いずれも楽観的見方が大勢で首を傾げるばかりでした。
経済界トップ3人の経済予測は、「安定感」「悲観ない」「五輪効果を波及させたい」など正月でもあり楽観論ばかりで他のエコノミストや投資コンサルタントも同様の楽観論が大勢を占めておりました。

2013年から始まった「異次元金融緩和」の矛盾が出始め、マイナス金利の影響で3メガバンクの業務純益の低落、人員・店舗の削減計画など、18年度は前期比17.9%の純益減となった。地銀はより切実で金融庁によると、18年度に赤字だった地銀は全国105行のうち4割の46行だった。さらにそのうち45行が2年連続赤字、うち27行は5年以上の連続。ひとたび赤字に転落すれば抜け出せない泥沼の状況に陥っているのです。

共同通信社をはじめとするマスコミ38社が構成する「日本世論調査会」の調査結果では、アベノミクスに「期待しない」「あまり期待しない」が56%でした。

日本が抱える借金の規模は太平洋戦争の末期とほぼ同じ水準になっています。18年度のGDPに対する借金残高比率は200%、終戦の前年1944年の同比率は204%でした。19年度補正予算4兆5千億円に加え、20年度予算案も2年連続の100兆円超えの見通しで借金残高はさらに上昇します。

このような経済状況の中で、どうやって借金を賄うのでしょうか。仮に将来世代に付け回しができたとしても日銀の債務超過の懸念は払拭できないでしょう。政府直接調達(ヘリコプターマネー)は多くの法改正が伴うことと対外信用の低下のデメリットがあり簡単にできるものではないのです。日銀はアベクロ共同体と云っても、日銀の自衛の意識も働き「やったふり」をするか、株価維持には協力するが国債の増発には制限をかける可能性が強いのです。そうなれば、税収を増やすしか手はなくなるでしょう。

運が悪いといえばその通りですが、折も折緊急事態が発生しました。以下産経新聞から—

イラクの首都バグダッドの国際空港で3日、米軍による空爆でイランの精鋭部隊・革命防衛隊の実力者ソレイマニ司令官らが殺害された。米国防総省が殺害を認める声明を出し、イラン側も死亡を認めた。ソレイマニ司令官はイラン国内で英雄視される存在で、米国とイランの緊張関係がいっそう高まるのは必至だ。
5日には革命防衛隊のデフガン司令官が米CNNテレビの取材で、米国への報復について「軍事施設に対する軍事的な対応になる」と明言した。

産経ビジネス

一方、トランプ米大統領は4日、イランが米軍による革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害の報復として米国民や米施設を攻撃した場合に備え、イランの重要施設など52カ所を攻撃目標に設定したとツイッターで明らかにした。「迅速に甚大な打撃」を与える態勢を整えたと強調し、牽制(けんせい)した。イラン外務省は5日、トランプ氏の発言内容を「国際法違反だ」などと批判し、反発している。

トランプ大統領は同じくツイッターで「アメリカは兵器に2兆ドルかけたばかりだ。わが軍は世界最大かつ最強なのである。イランがアメリカ軍基地やアメリカ国民を攻撃した場合には新調の兵器を送りこむ。何の躊躇もない。」と述べています。

もはや日本が仲裁できる段階ではないでしょう。すぐさま、イランが直接米軍直接攻撃することはないだろうが、最も報復が実施される可能性が高いのは空爆があったイラクです。司令官とともに殺害されたイスラム教シーア派民兵組織「人民動員隊」は無意味になった外国部隊を追い出すために結束するよう求め、駐留米軍を撤退させる法制化を目指す動きを示しています(1月6日駐留米軍撤退が決議されたとの報道あり)。このあたりから緊張が高まりエスカレートしていく可能性が強いのです。

日本人のこの問題に対する危機意識は大変低く、「仲裁」どころか板挟みとなり窮地に立つ恐れが強いのです。自衛隊の中東派遣は実にタイミングが悪かったということになるでしょう。

4日に発表された金価格が一気に136円の値上がりとなりグラム当たり6002円をつけた事実は、世界がいかに危機意識を持っているかを表しております。ドル円は一時107円台を記録し、日経平均株価は23207円(500円近くの下落幅)となったのです。

危機管理の鉄則として「どんな情報も否定するな」そして「どんな情報も鵜呑みにするな」というのがあります。そして「プロは最悪を考える。そしてリカバリープランを一つでなく二つ以上持て」「小さい兆しがいくつか重なった先にリスクがある」と警告しております。

正月早々悪いニュースばかりで恐縮でした。次回は必ずエネルギー問題を取り上げ「自然エネルギーが化石燃料を凌駕する」と題して、世界の潮流として電気料金が画期的に安くなり産業構造を変えるという希望のあるお話をしたいと考えております。