ダイヤモンド・プリンセス

最近、多発する「不可解で予測不能な現象」が気になります。
例を挙げれば
● 完全雇用下の実質賃金の低下
● 低金利下での企業債務の増加
● 潜伏期間中の新型コロナウイルスの感染拡大

原因はいろいろあると思いますが、社会が複雑化しているからでしょうか。ヒントは世俗を離れたところにあるのかも知れません。
参考までに、フランシスコ教皇の次の言葉をあげておきます。
「多くの人々は貢献すべき仕事を得られず、挑戦すべき機会も与えられず、その状態から抜け出すことさえ叶わぬ中で排除され、除外され….人間もその存在自体、使用後即廃棄に至る消費財と見なされている。斯くなる”使い捨て”文化を我々は生み出し、しかも急速に蔓延している」

常識的には当然こうなる筈が現実には逆の結果になっている。こう云う理不尽なことが多発するのは、社会が成熟し天井にぶつかっているからではないでしょうか。十字路はいつ晴れるのでしょうか?。

前の2っの現象は皆さんに考えていただくこととして、今回は新型コロナウイルスについて「潜伏期間中の感染拡大」に注目したいと思います。

《新型コロナウイルス感染症の疑い例の定義》

以下のⅠおよびⅡを満たす場合を「疑い例」とする。

Ⅰ 発熱(37.5度以上) かつ 呼吸器症状を有している。
Ⅱ 発症から2週間以内に、以下の(ア)(イ)(ウ)の曝露歴のいずれかを満たす。
(ア)武漢市への渡航歴がある。
(イ)「武漢市への渡航歴があり、発熱かつ呼吸器症状を有する人」との接触歴がある。
(ウ)新型コロナウイルスの患者(確定例)、またはその疑いがある患者と必要な予防策なしで2メートル以内での接触歴がある。

注)渡航歴はその後、湖北省に改定されている

以上が現在保健所に連絡すると「国の方針として定められている基準です」と云うことで「あなたはこれに該当しないから検査できません」と云われます。この基準を満たさなければ検査を受けられないのです。検査に時間と手間がかかることが原因のようですが、最近になってこのことが潜伏期間中の新型コロナウイルスの感染拡大につながっているとの批判が高まっているのです。日本感染症学会は検査範囲の拡大が必要なことを示唆しております。

時々刻々と変化する事態に対して対策が後手に回っていることに対して、いら立ちがつのってきております。専門家の間でも混乱が見られます。感染進行フェーズの相違(時点のずれ)を無視した単純な比較、数少ない症例で有効な薬が発見されたと云う専門家らしくない発言など非科学的な言動が目立ちます。

その中で、その後改定され、渡航歴が湖北省となったにしても「湖北省しばり」を外すべきだとの声も聞かれるようになりました。個々の感染の事例を分析すると、約半数の感染は潜伏期間の患者からの感染だと云う結果も報告されております。潜伏期間は最大24日と云う中国の学者の説も最近になって報道されております。人口700万の香港で、クルーズ船の乗船者1800名全員に対して感染症検査を実施したとの報道があったことを勘案すると「日本はなぜ全数検査を避けるのか」と云う批判が出てくるのも当然でしょう。

そこで、遺伝子検査・PCR検査の簡易化がどの程度進んでいるのかを調べてみました。

1.米当局、新型ウイルスの検査キット配布 4時間で診断と云う記事が日経新聞にありました。
米疾病対策センター(CDC)は6日、中国を中心に感染が広がっている新型コロナウイルスに関し、感染を診断する検査キットを開発し、国内外の検査機関に配布を始めたと発表した。さらなる感染拡大の予防につなげる。
CDCは、これまで新型ウイルスの感染が疑われる人から採取した検体を国内の検査機関から受け取って診断しており、診断に時間がかかっていた。検査キットの配布で、各検査機関が診断できるようになる。
CDCによると、検査キットは通常のインフルエンザの診断で使用する機器で利用でき、4時間で結果が出る。1キットで700~800の検体を診断できる。記事の内容は以上のものです。

2.韓国疾病管理本部は、7日から新型コロナウイルスの感染を6時間で確認できる診断試薬を導入すると明らかにしました。従来の検査法は、感染の診断まで24時間以上かかり、隔離などの迅速な対応が難しいとされていた。

3.国立感染症研究所は1月31日、新型コロナウイルスの分離に成功したと発表した。同日会見した脇田隆字所長は新型コロナについて、感染研が現在用いているリアルタイムPCR法だと感染の有無が分かるまで6時間程度だが、新型コロナウイルスの分離の成功は、リアルタイムPCR法の改善にも役立つとの発言があった。

4.タカラバイオ株式会社は、検便、血液、細胞等の検体からRNA抽出・精製の前処理を行わず、検体中の遺伝子を直接検出できる1ステップリアルタイムPCRプレミックス試薬「PrimeDirect™ Probe RT-qPCR Mix」(以下、本製品)を本年4月25日より発売します。併せて、検査機関等を対象とする本製品を利用した遺伝子検査キットのカスタム製造の受注を開始します。
 リアルタイムPCRを用いた遺伝子検査は、ウイルスや病原菌検出、遺伝子組換え食品検査、遺伝病・がん遺伝子検査などの幅広い分野で利用されています。リアルタイムPCR検査は、一般に前処理として検体から専用キットによる核酸(DNA・RNA)の抽出と精製などの煩雑な作業を行なった後に行われますが、本製品は、前処理が不要で、直接、検体を検査試薬に添加して検査を行えます。また、本製品は反応阻害物質による影響を受けにくく、遺伝子検査の課題である「キャリーオーバーコンタミネーション」の防止剤UNGを添加した製品も揃えています。本製品の利用により、リアルタイムPCR検査をより短時間で簡便に、低コストで行えます。(同社はタカラ酒造の関連会社で宝ホールディングス株式会社のバイオ事業部門としてスタートしました)

以上の情報から、現時点でも24時間もかかる検査は、6時間でできると云うのが相場で、あとは費用の問題だけではないかと考えられます。経済危機にもつながりかねない現状を見れば、費用の問題だけで全数検査を躊躇する姿勢は理解できません。検査の合理化が進めば急速に事態は収束するのではないかと考えます。東京五輪もあり、対策の方向は是正せざるを得ないでしょう。

反面、Youtubeや他のSNSで脅迫的な投稿が横行し始めました。最悪のことも頭に置かなくてはならないのは勿論ですが、条件が整えば急転直下快方に向かうことも想定しておく必要があるのです。

新技術の明るい情報のご提供が新型コロナウイルスのために遅れていることをお詫びします。次回までには準備できると思います。