上の写真は、断層撮影スキャンに基づく3Dモデルで、ジョージワシントン大学病院で死亡した59歳の男性の肺に広範な損傷(黄色)をもたらしました。

以下はアメリカの科学技術誌「SCIENCE」2020年4月17日記載の記事から

冒頭の概要と脳と中枢神経系に関わる症例をピックアップしました。(英文翻訳のため文章表現に違和感が有るかも知れません)

COVID-19の確認された症例数は世界的に220万人を超え、死亡者数は15万人を超えているため症例は十分な数となっております。

臨床医と病理学者は、コロナウイルスが体を破壊することによるダメージを理解するのに苦しんでいます。彼らは、肺はゼロ機能になっているが、その到達範囲は心臓や血管、腎臓、腸、脳を含む多くの臓器に及ぶ可能性があることを認識しています。「この病気は、身体のほとんどすべてを攻撃し、壊滅的な結果をもたらす可能性があります」と述べております。

COVID-19の臨床データを収集するための複数の取り組みを率いるイェール大学の心臓専門医Harlan Krumholzとイェールニューヘブン病院は述べています。「その凶暴性は息をのむような残酷さです」と—-。

COVID-19患者のもう1つの印象的な症状は、脳と中枢神経系に集中しています。脳炎症性脳炎、発作、および「交感神経嵐」を伴う患者を見てきました。これは、発作のような症状を引き起こし、外傷性脳損傷後に最も一般的な交感神経系の過剰反応です。COVID-19の一部の人々は一時的に意識を失います。他の人は脳卒中です。また、多くの人が嗅覚を失っていると報告しています。

Fronteraやその他の人々は、感染が酸素欠乏を感知する脳幹反射を抑制する場合があるのではないかと考えています。これは、危険なほど低い血中酸素濃度にもかかわらず、一部の患者が空気をあえいでいないという事例観察の別の説明です。

ACE2受容体は神経皮質と脳幹に存在すると、ジョンズホプキンス医学の集中治療医ロバートスティーブンスは言います。しかし、ウイルスが脳に侵入し、これらの受容体と相互作用する状況は不明です。とはいえ、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行の背後にあるコロナウイルス(今日の犯人の近親)がニューロンに侵入し、脳炎を引き起こすこともありました。4月3日、日本のチームのInternational Journal of Infectious Diseasesのケーススタディは、 髄膜炎および脳炎を発症したCOVID-19患者の脳脊髄液中の新しいコロナウイルスの痕跡を報告しました。


結婚記念日のクルーズ船旅行が… 夫を失った妻が語る(NHKニュースwebより

1か月半集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船して夫婦ともに感染。夫は発症から1か月半で亡くなりました。妻は「夫の死を無駄にしたくない」と感染症特有の怖さと無念さを明かしました。初めて語ったという経験をできるだけ詳細にお伝えするため、インタビューを一部整理した上で紹介します。

夫婦は70代。結婚記念日のお祝いにクルーズ船に乗船した。2週間かけてアジア各国をめぐる船旅。始まりは穏やかなものだった。

彼の手帳では「コロナウイルスで横浜に20時入港。医務室にて受診。その時36.7度、様子見」っていうふうに書いてあって。ただ、「咳と胸苦しさ」っていうふうに書いてあるんですよ。

胸苦しいなんていうことを普通の生活の中で彼が言ったことなかったし。だから、こういうふうに書くからには相当に苦しかったんだと思うんだけれども、何で言ってくれなかったんだろうって。5日になって朝8時ごろ、「14日間客室留置」というアナウンスが流れて、それで客室から出ちゃいけない。この頃彼は、もう何か寝てばっかりいましたね。横になってね。

2月10日13時40分にふたりのお医者さんが来て下さって指先で酸素濃度を測って、その時にお医者さんたちの顔色が変わった。何か、はっという感じ。表情が一変したのが分かったんですよ。これ容易じゃないなと思って。14時10分に「緊急搬送しますからすぐに支度して下さい」って言われたんですよ。もちろんそのまま出しちゃっていいんだろうけれども、彼が退院する時に困らないようにと思ってお洋服と靴の1式を持たせて、それで送り出したんですよ。それで、14時40分ぐらいに担架に乗せられて運ばれて、それを私は廊下で見送るしかなくて。廊下に出ちゃいけないの。廊下に出ると見張りが立っていて「中入れ、中入れ」ってすごいから。

それで16時26分。彼から電話が入った。病院に着いて、「ちょっと大変みたい」っていうことを言って。「お医者さんと替わるね」と言って。それでICUの呼吸器内科の先生と話をしました。そしたらかなり重篤で人工呼吸器、それをつけなきゃ駄目だっていうふうに言われて。でも帰らなくなるなんていうことは想像もしなかった。最後だなんて絶対思ってない。人工呼吸器付けて少し楽になるんだったらそれでいいわね、ぐらいしかないですよ。

妻の症状は軽く、3週間ほどで退院。すぐに夫の元に駆けつけたが、ICUのガラスの向こうに夫はいた。

行ったらICUのガラス越しに見る彼は本当に全て管につながれちゃっていて。目の前におっきなECMOがあって。血を取って、それを循環しながら酸素を入れて、それでまた体に戻すというそういう機械だから、かなり大きな機械で。それで酸素がどんどんどんどん入って出てるのも分かるし。それで管も赤い血が流れているというか。顔もよく見えない、顎ぐらいしか見えない。ガラス越し。全然向こうの音も聞こえないから。

ぼう然としてる時に、先生が時系列で彼の肺の写真、見せてくれたのね。そしたらもう、入院した時から相当に白くて、その白さがどんどんどんどん日を追って増すばっかり。それで途中で肺にたまった水を抜いた時に、少しだけその曇りがとれてるんだけど、また翌日からは白くなっていくという。「確実に悪い方に向いています」というふうに言われて。それで「検体を送ってもいいですか?」と言われて。彼のこういう状態が無駄にならないように、そうしてくださいっていう同意書にサインしましたね。

「コロナというだけで、普通の葬儀社は受けてくれないから。病院であちこち当たって、引き受けてくれるところがある。ただし普通だと1万円だか、1万5000円の火葬費なんだけれども、8万円かかる。それでもいいですか」っていう…。良いも悪いもそれを頼む他ないし。火葬の日というのも、空いた日の空いた時間に人払いをして、それで火葬しますっていうふうに聞かされて。何かすごく無残な気がしましたけれどもね。

さっき私の呼びかけに応えてくれたはずの人の、もう火葬の話ですよ。コロナに侵されてる人間の火葬のことっていうのは、私も前もってタブレットで見たりしたの。どうなるんだろうって。そしたら中国なんかでは、いきなり袋に入れられて24時間以内に火葬っていうふうに書いてあったから。そんなこと、と思ったけれども。でも、それを実際に先生から聞かされて、「1度その袋に入れられたら、もう誰も袋を開けることはできない」って言われてね。愕然としながら、その話を聞いてた。ペットだって自分の家に持ち帰って、ちゃんとね、お葬式みたいなことするじゃないですか。それなのに、それもできない。だから、コロナの怖さというか、残酷さというか。それを本当に思い知らされた。

夫のなきがらはすぐに特殊な袋に納められた長い間そこに置いとくわけにはいかないっていうことで、葬儀屋さんが、防護服に身をかためて、透明の袋に入れて霊安室に運んでくれたのね。霊安室で祭壇みたいなのを作ってくださって。そこでは手を合わせるだけでしたけど。すぐにお棺に入れて蓋をしてしまう。

「あす23日に火葬にします」ということで。それも普通だったら霊柩車に一緒に乗るでしょう?家族は。でも、それもできない。私と夫の兄がタクシーで先に行っていて、それからお棺を乗せた霊柩車が後から来て、それで火葬に付す。火葬屋さんも、ものものしいいでたちで。

彼がクルーズをすごく楽しんで、思いがけないコロナウイルスに侵されて。そして苦しんで逝ったさまも、船の中の実態も知ってほしかったし。そういうことがあんまりテレビなんかでは出てこないし。

私の本当に一個人の経験だけれども、それを伝えたかった、知ってほしかった。だから、まだまだすごい生傷が残ってて、何か血が滴るような感じがするけれども、それでもあえて話をしたいと思いました。かさぶた剥がして血が出るみたいな、そういう思いをするけれど。それでもあえて彼のために、そうしたいと思ったの。


以上の情報から私はこの強敵について次のように考えました。

世界の症例が数多く出てきた結果を見るにつけ、COVID-19は「息をのむような凶暴性」と云う表現に衝撃を受けたのです。これは私の勝手な想像かも知れませんが、その凶暴性は癌も及ばないほどではないかと思いました。

癌は転移しますがそのスピードは数か月あるいは数年の単位です。それに比較してCOVID-19は数日あるいは週単位と云う猛烈なスピードで転移するのです。肺胞に侵入すると即、心臓が侵され血液・神経系統と拡散していくのです。

血栓が細かくばらけたり血液がドロドロとなり、肺から心臓、腎臓、神経、脳、消化器などあらゆる臓器を攻撃する能力を持っています。脳が膨らむと云うのは正に衝撃的な症例でした。多臓器不全と云うにはまだまだ生ぬるい感じでした。重症化すれば人間を木っ端微塵にする凶悪な敵だと云うことがわかるでしょう。

だから癌より怖い強敵だと云っても過言ではないでしょう。インフル並みだと云っていた一部の「専門家」はどう申し開きをするのでしょうか?

先にご紹介した、中村祐輔シカゴ大学名誉教授も児玉龍彦東京大学先端科学研究センター名誉教授も癌研究の専門家でした。これは偶然の遭遇だったのでしょうか?。

両氏は癌研究でプレシジョン・メディシンを研究の基礎としてきた関係から、変異や免疫と云う問題など、遺伝子分析・遺伝子配列解析、情報工学との結びつきから、癌研究と新型コロナウイルスとは深い関係があったのです。

注)プレシジョン・メディシン(精密医療)について:がん医療においては1990年頃からゲノム(遺伝情報)研究が注目されています。膨大な個人のデータを収集し解釈する情報科学の応用が必須。

中村祐輔教授・児玉龍彦教授この両専門家をコロナ対策専門家チームに加えなければ、この未知の強敵の実態を解明することは不可能であることは明白です。

「結婚記念日のクルーズ船旅行が… 夫を失った妻が語る1か月半」を読んで胸が詰まる思いでした。このような悲惨な体験はこのまま放置すれば、今後も増えるのではないかと懸念されます。

検査を強化して、大規模PCR検査で強敵の実態をつかみ、トリアージ(感染者の重経度の区分により、適切な医療手段と結び付ける)を最適化して、重症化対策をすると同時に医療崩壊を防ぐこと。早期発見、早期治療に徹し、早期にアビガンを投与し悲惨な死を防ぐ、この当たり前なことを早く実行に移すことしか解決の道はありません。


アビガンについて(東洋経済オンラインより)

アビガンはもともと富士フイルムホールディングスに買収された旧富山化学が1990年代後半から開発してきた薬剤だ。抗菌薬、炎症性疾患、神経系疾患の領域を対象に、新薬のタネを探していたところ、たまたまインフルエンザに活性のある(インフルエンザウイルスに作用する)化合物を見つけた。それが開発コード「T-705」、のちのアビガンだ。

T-705は当初から大きな期待を背負っていた。代表的な抗インフルエンザ薬「タミフル」が細胞内で増殖したウイルスを外へ出なくさせる作用機序(作用メカニズム)を持つのに対して、アビガンは「RNAポリメラーゼ」という酵素を阻害することでウイルスの増殖そのものを防ぐ、今までにない作用機序であるためだ。原理上は、遺伝子変異が起きず、耐性ウイルスを生じないといわれている。

2000年にカナダで開催された国際会議では、アビガンがインフルエンザのほか、既存の抗インフルエンザ薬の耐性ウイルスにも有効性があったことを示した。催奇形性の影響アビガンが新型コロナウイルスの救世主になる可能性はあるかもしれない。その一方で、副作用を踏まえたうえでインフォームドコンセントをどうするか、どんな患者にどのように使用するかなど、クリアしなければならない課題は大きい。