FRB過去の金融引きしめ時の状況に近似
[ロンドン 18日 ロイター] – 2013年5月、米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和策の縮小を示唆。債券投資家の大規模なろうばい売りを引き起こした。「テーパー・タントラム(かんしゃく)」と呼ばれた現象だ。そして現在は、当時よりも世界全体の債務総額が約70兆ドル膨らんでいる。同じような売りが発生すれば、もっとひどい混乱になりかねない。
サマーズ元米財務長官など一部専門家は、巨額の財政出動がインフレ高騰を誘発すれば緩和縮小時期は想定より、もっと早まると警鐘を鳴らす。こうした懸念を反映する形で、米10年国債利回りは16日に一時約1年ぶりの高水準に跳ね上がり、株価は最高値圏から伸び悩みに転じたばかりか、長らく冬眠状態にあった債券市場のボラティリティー指標までが、久しぶりに注意信号を点滅させている。
実際、国際金融協会(IIF)によると、世界の債務総額は13年の210兆ドルから足元で281兆ドルに増加。企業、家計ともに新たに背負った借金はあまりにも多い。
市場が金利変動に対してより過敏になっているのは、債務の規模だけが原因ではない。
まず近年の金利急低下により、トレードウェブで取引される世界の国債と社債のうち利回り3%以上の割合はたった7.8%にとどまっている。世界の株式の予想利益に基づく株価収益率(PER)は13年5月の12.5倍から20倍まで上昇。投資家が高利回り債(ジャンク債)にも殺到した結果、直近のバンカメ調査で高リスク資産の保有比率が過去最高を記録したという現実がある。
主要中銀はインフレに金融引き締めで応じる意欲を以前より弱め、物価上昇が行き過ぎる事態になっても低金利を続けるとも繰り返し表明している。米大手資産運用会社ブラックロックは、13年に起こした騒ぎと、今の世界の債務増大によって、中銀はどうにかして市場の「かんしゃく」をなだめざるを得ない立場に追い込まれるとみている。
(Dhara Ranasinghe記者、Karin Strohecker記者)
スマホ・アプリ「ロビンフッド」を提供するロビンフッド・マーケッツ社は、元々若者たちに株式取引のチャンスを与えるため2013年に設立された。スタンフォード大学の二人の学生によって創立された同社は、当初から「金融の民主化」をモットーに「収入がなくても誰もが利用できる金融サービス」を目指した。
ロビンフッドは「オプション取引」のように複雑なデリバティブ商品も提供している。金融の専門知識を持たない素人ユーザーが、これらデリバティブに手を出すことで、巨額の損失を出すケースも多発しているとされる。
今年6月には、ネブラスカ州在住の20歳の男子大学生が、ロビンフッドのオプション取引で73万ドル(約8000万円)の巨額損失を出したと思い込み、自殺するという事件が起きた。信用取引とは、十分な資金を持たない投資家が金融機関等からお金を借りて、そのお金でデリバティブのようなレバレッジの効いたハイリスク取引を行う方式だ。その際、ロビンフッドからお金を借りたユーザーは当然、後で金利をつけてお金を返す。これが同社の収益源の一つとなる。
要するに「タダより高いものはない」というのが事の真相らしい。
日本でも、コロナ禍のステイホ-ムでの暇つぶしに、「ロビンフッド」に軽い気持ちで頭を突っ込んだは良いが、米国のジャンク債にわけも分からず取付かれ、大損をした事例が頻発している。コロナは健康被害ばかりでなく意外なところで悪さをしているのだ。
日銀の2月10日のバランスシートを見て驚いた。
資産の部:国債537.5兆円(前年同月比+49.7兆円)社債・投資信託ETF等43.9兆円(同+11.6兆円)貸付金116.5兆円(同+67.4兆円)
負債の部:当座預金486.1兆円(同+95.3兆円)政府預金71.0兆円(同+31.9兆円)
バランスシート合計額:710.5兆円(同+130.6兆円)前年同月579.9兆円から22.5%増
リスク資産の急膨張、相手勘定負債の苦肉の策で辻褄合わせ、バランスシートの急膨張で金融緩和の出口なし。まさに日本こそが、テーパー・タントラムに突入か。