現在のところ東京都内の路上生活者は2000人、ネットカフェ等で定住ハウスを持たない云わば路上生活予備軍が4000人にも達し、緊急事態宣言でネットカフェを追われ、通信手段も日銭も枯渇した困窮者が急増しています。

コロナ禍の寒風にさらされ住居を失った非正規労働者たちが悲鳴を上げています。福祉事務所は生活保護申請を如何にして退けるかに専念し、「たらいまわし」や「無料・低額宿泊所」(無底と云う)に押し込むことを最優先させています。

緊急支援を行っている一般社団法人つくろい東京ファンドに寄せられた困窮者の悲鳴は次の通り。
「ネット暮らしでしたが営業停止で、寝泊まりするところが無くなり、また仕事も職場が自粛するとともに退職扱いとなり、所持金がほぼありません」
「お金が無くなり携帯も使えず、電話も交通費も連絡手段が奪われ、野宿です」
「住む家もお金もないです。マスクを買うお金もないし、人生詰んだと思ってます」

皆さんは無底でもとりあえず雨風をしのげればよいと思われるでしょう。ところがこれが刑務所だというのです。
ムショ帰りの怖いおじさんや、はんばの仕切り屋風情がにらみを利かせ、10人部屋の2段ベットに押し込まれ、逃げることもできず精も根も尽き果て廃人のようになってしまう人も多数おります。逃げ出して福祉事務所にたどりついても同じことの繰り返しになるだけです。

なぜこんなことがおこるかと云えば「無底」の認可に問題があるのです。ほとんど届け出だけで営業できるので貧困ビジネスが根づいてしまいます。厚生労働省からは無底の環境改善の指示が出ていますが、管理は地方自治体に任せられているのでなかなか改善には至らないのです。もちろん良心的に運営している自治体もたまにはありますが、ほとんどは「つくろい東京ファンド」のような支援団体の人が申請者に同行しあの手この手でシビアな交渉に時間をかけないと解決しないのが現状です。

つくろい東京ファンドは東京アンブレラの寄付やクラウドファンディングで集まった寄付で賄われています。電話番号を失くし、所持金200円で身動きできない困窮者の緊急支援にこの資金が役立っています。東京都がビジネスホテルを借り上げてくれたは良いが都内に6か月以上滞在した人に限ると云う条件が付いたり、厚労省が個室化の方針を示してくれたは良いが3年後までになどの経過措置は実情に合わず、どうしても民間の緊急対応が必要になるのです。

不安定な居住環境のもとでは、コロナ感染の第3波がくればまた同じことの繰り返しです。こんな悪循環を繰り返せば、当事者たちだけの疲弊だけでなく社会的な損害も大きくなります。


厚生労働省は2日、新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めは、1月末現在で8万4千人だったと発表しました。また東京商工リサーチは2日、新型コロナウイルスに関連した全国の倒産件数が1000件になったと発表しました。これに加え、コロナ禍で休廃業が激増し深刻化しています。
一方株価は上がる一方で東京株式市場の平均株価は30年ぶりの高水準に達し一時3万円越えとなったのです。この対比はどう考えても大きな歪みです。

東京オリンピックで既に切符を購入している外人客が大挙来日し、街に路上生活者があふれていたらどうなるのだろう。事実を隠蔽する動きがでたら、困窮者にとって最悪です。3兆円もかかる大イベントの費用の一部でも困窮者支援に回すべきではないでしょうか?


次に、たった7~8名で奮闘しているつくろい東京ファンドのメンバー、小林美穂子さんの言葉を記しておきます。

アベノミクスなんて言葉で誤魔化されてきた、日本の経済が、とっくに崩壊していたのをコロナが可視化させた。この2か月間私が対応している人たちは、いわゆる多くの人が想像する「ホームレス」ではない。補償も出ないまま休ませられている正社員もいれば、この国の文化・芸能を支えてきたアーティストもいる。

「困窮者」「路上生活者」「ネットカフェ生活者」というひとくくりのフォルダーに収納された中身は、一人ひとりの生身の人間。
あなたや私と変わらない顔も名前も歴史のある一人ひとり。

経済危機の煽りを受けて、住む場所すら失った彼らに、持たざる者に厳しすぎる福祉制度や社会が追い打ちをかける。

私は彼らの姿に、近い将来の自分を見る。明確にイメージできる。

今の彼らは、このまま進んだ先のあなたでもある。

市民は未来を選べる。
市民は未来を作れる。
現実逃避して分かりやすいヒーローを待ち望んでいる場合じゃない。

みんなが耐えた。犠牲者もたくさん出したこのコロナ禍を良い方向に転じさせないと、あまりに浮かばれないではありませんか。
誰もが尊厳を保ちながら生きられる社会を作っていきましょう。もう、後がないです。

以上が小林美穂子さんの切なる訴えです。「コロナ禍の東京を駆ける」の著書を読まれれば、緊急事態宣言下の困窮者支援の実例の数々の深刻さに触れることが出ます。時間があればお読みになる事をおすすめします。


最後に、一つの試案として次のことを提案します。
自治体の福祉事務所に困窮者を対象とした集中的PCR検査を義務付けること。
効果として、少なくとも「無底」の超過密が明らかになり感染対策上も有効な対策に迫られる。更に住まいを失った生活困窮者の実態がわかり、感染対策上もステイホームが破綻していることが浮き彫りとなる。結果として生活保護行政のひずみが明らかになり対策が迫られる、等が期待できます。