楽観砕いたコロナ変異種、免疫仮説の抜本修正が必要

国内の変異種に関する報道が断片的でまとまりがなく分からない事が多かったが、ようやく3月8日になって明らかになってきた。まず、今分かっていることをまとめてみる。

3月8日現在、国内の変異株、全国で251人(航空検疫57人を含む)、1月のゼロから2月に入って感染者が散見され3月に入って急増している。251人の内訳をみると、東京14人に対し新潟31人、兵庫37人と地方に広がっている(東京の14人は、たまたま検査が徹底していないことの表れで、実際は新潟の37人より少ないとは考えられない。)

大阪でコロナ感染者287人に対して変異株の検査をしたところ、2割強の64人が変異株であることが明らかになった。神戸市で6000人規模で、症状が出ている人に対しスクリーニング検査をしたところ半数近くが新型だったと報告された。

新種を発見するにはゲノム解析が必要で3万文字の中から発見するのは大変そうだ。ゲノム解析が終わり変異株が特定できれば後はそんなに難しい作業ではなさそうだが、変異が多発して新株がどんどん出てくるとこれは厄介なことになると推定できる。いずれにしても検査体制の拡充は必須条件だ。


次に世界の状況を見てみよう。

[シカゴ 3日 ロイター] – 米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME、シアトル)のクリス・マーレイ所長が新型コロナウイルスの感染数と死者数について示す予測は、世界中から注視されている。しかし、同氏は今、流行の先行きについて仮説を修正しつつある。

南ア型やブラジル型の新たな変異株を巡ってここ数週間に出てきたデータは、そうした楽観的な見方を打ち砕いたという。専門家らは今、コロナは一定の地域や季節に一定の罹患率で広がり続けるウイルスとして地域社会に残るというだけでなく、今後何年も発症者や死者の多大な犠牲を招く可能性が大きいとの見方に変わっている。

こうしたことから、人々は、特に高リスクの人々は、習慣としてのマスク着用や、感染急増時の混雑回避などの対策が今後も必要になるとみられるという。

バイデン米大統領の医療顧問トップを務める米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長はインタビューで、ワクチン接種後であっても、変異株が出てきているのならば「自分はこれからもマスクを着用したい」と語った。ちょっとした小さな変異株が出現するだけで、これが次の流行急増を誘発し、いつ生活が正常化するかの見通しをがらりと変えてしまうとも指摘した。

<死者はインフルエンザの4倍にも>

マーレイ氏によると、南ア型や同様の変異株が急速に広がり続けた場合、次の冬のコロナによる入院数や死亡数はインフルエンザ流行の4倍に高まる可能性がある。これは有効性65%のワクチンがその国の国民の半数に接種されたと仮定しての話だ。米連邦政府によるインフル死者の年間予測に基づくと、最悪の場合は次の冬に米国だけで最大20万人がコロナ関連で死亡する可能性があるとの計算になるという。

専門家の考え方が変わってきたことは、流行がいつ終わるかを巡る各国政府にも影響しており、発表のトーンは慎重になってきている。ワクチン接種を世界最速で進めている国の一つである英国は先週、世界でも最も厳しい部類の移動制限措置について、解除はゆっくりになるとの見通しを示した。

米政府が予測する生活様式の正常化の時期も、何度も後ずれしている。最近では昨年夏の終わり頃からクリスマス時期になり、さらに今年3月ごろに修正された。イスラエルが発行する免疫証明書「グリーンパス」は、コロナ感染から回復した人やワクチン接種を済ませた人に与え、持っていればホテルや劇場の利用を認める仕組みだが、有効期間は半年しかない。免疫がどれだけ長く持続するか、よく分かっていないからだ。

<コロナは当初から「動く標的」>

そもそも最初から、コロナウイルスは専門家にとって、いわば「動く標的」だった。

流行の初期にも、有力専門家らはコロナウイルスが一定の地域や季節に一定程度、繰り返し流行が続いていく可能性があり、「完全に消え去ることはないかもしれない」と警告していた。これは世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者マイク・ライアン氏の意見でもあった。

<「むち打ちを食らったような」見通し変更>

楽観論は短命に終わった。12月末には英国が感染力の強い新たな変異株が見つかったと警告。この変異ウイルスは英国内で急速に感染の主流になった。ほぼ同じ頃、研究者は南アとブラジルで、感染力のさらに強い変異株が流行し始めたことを知ることとなった。

ファイザー所属のワクチン専門家、フィル・ドーミツアー氏は昨年11月の時点では、ロイターに対し、同社ワクチンの成功はコロナウイルスが「免疫に対するぜい弱性」を持つことを示していると話し、「人類にとって画期的な出来事」と強調していた。しかし今年1月初めには、同氏は変異株が新たな局面到来の予兆となっていることを認めざるを得なかった。

1月下旬には、ワクチンに及ぼす影響がさらに明らかになってきた。米ノババックスのデータが、英国の治験では89%の有効性を示した半面、南アでの治験ではわずか50%だった。1週間後には、英アストラゼネカ のワクチンが南ア型による軽度の発症に対して限定的な予防効果しかないとするデータも示された。(長文のため変異種に関する部分をピックアップした)


コロンビア大学の報告ではニューヨークで感染力の強い南ア型に似た新たな変異ウイルスが拡大中と発表、2月末には3%だったのが、3月に入って12%に急増したと云う。

ブラジル型はアマゾナス州マナウス市で83.4%感染している。世界では14か国に拡大し、感染度は従来型の約2倍にあたる。

変異株は従来型が減ってくる段階で増加する性格を持っている。もう一度WHOのテドロフ事務局長警告を噛みしめる必要がある「ワクチンだけに頼るのは危険だ」

追記:
今朝、ブラジル型変異ウイルスの報道が多発した。埼玉県で変異ウイルスが20人発生しその内18人がブラジル型で2人が重症だと云う。報道機関により18人がブラジル型と断定するものと、濃厚接触者だとするものがあったが、ブラジル型が蔓延始めたことには変わりがない。感染率は約2倍、従来のコロナウイルスとは全く異なるウイルスだとの見解もある。
いずれにしても、変異株が全国的に蔓延始めた今日、早期の抜本的対策が求められている。