2022年6月27日NHK1ラジオ・あさラジ
「世界の中央銀行の金融政策変更の動き」
日本総合研究所 調査部 主席研究員・河村小百合氏
2012年12月26日に始まった第2次安倍政権において、安倍晋三首相(当時)が表明した「3本の矢」を柱とする経済政策は日銀の金融政策に大きな変化をもたらし、米・ヨロッパの中銀がコロナ対策で行った金融緩和の修正、次の3つの金融政策との差異を鮮明にした。
1.テーパリング
2.金利引き上げ
3.資産縮小
米国の中銀(FRB)は国債の新規買い入れ、つまりテーパリングを3月で終了している。
更に異状なインフレ対策もあり0.5%〜0.75%の利上げを3回にわたり行っている。
ヨーロッパの中銀もこれに合わせテーパリング、利上げを行っている。
先進国の金融政策の常識は次の通り変化している。「コロナ対策等で国債発行を国全体の政策として進め中銀がこれを買い入れたのだから中銀の資産縮小は国全体の責任であり、税を持ってこれを支えるのが当然である」というのが普通となっている。これに対し一切の甘えは許されない。
日銀は以上の常識から全くかけ離れた政策を取り続け、依然としてマイナス金利、ゼロ金利を捨て切れていない。後段で述べるように日銀の資産膨張は甚だしく、しかもリスク資産の比率が多く、引当金を含めた資本勘定が過少であるため、資産縮小は難しくもちろん利上げは債務超過を招く恐れさえある状況だ。
出口のない我が国の金融危機は、国債の先物取引によって更に危機が増幅される事態に直面している。
日銀が引き受けた国債は、外国の先物市場の必然のあおりを受け先物が買い叩かれることで、円にとって高値で買わされる宿命を背負うことになる。当然利上げは不可能となり金融緩和の出口は塞がれるばかりだ。
以上河村小百合氏は元日銀に席を置いた金融政策の専門家だが、かなり思い切った判断をあえて示しておられる。
日本の政治家の経済知識は驚くほど稚拙であり、これは与野党を問わずだ。アベノミクスのツケがいかに大きいか、政府と日銀が10年来進めた超金融緩和の出口が塞がれ円安とハイパーインフレ(スタグフレーション)が目の前に迫っている自覚が全く不足している。
経済原則から言えば、経済危機は年単位で遅れて現れるものだが、日本の金融政策があまりにも世界の動きからかけ離れているため年末までに騒ぎが爆発する恐れが大きい。
日銀の直近の営業報告、旬報の要点項目を紹介しておく。
営業毎旬報告(令和4年6月20日現在)単位は兆円表示とした
国債 540.531
社債 8.435
金銭の信託(信託財産株式) 0.407
金銭の信託.信託財産指数連動型上場投資信託 36.765
金銭の信託(信託財産不動産投資信託) 0.657
貸付金 142.463
資産合計 742.285
引当金勘定 7.700
資本金 0.0001
準備金 3.443
資本勘定合計 11.143