危機管理の鉄則
危機管理の鉄則として「どんな情報も否定するな」そして「どんな情報も鵜呑みにするな」というのがあります。「プロは最悪を考える。そしてリカバリープランを一つでなく二つ以上持て」「小さい兆しがいくつか重なった先にリスクがある」と警告しております。
これは以前の投稿でも述べたことです。悪いことをあまり言いすぎると嫌われる傾向が強いことはわかっております。しかし昨今の状況をみると、リスク要因があまりにも多く,しかも重なって出てくるので黙っているわけにはいかなくなってきました。
米・イラン対立、米中貿易戦争、ブレグジット、新型コロナウイルス、日本の異常気象、オーストラリア森林火災、トルコの地震、香港マラソン中止、ダボス会議での世代間対立、ダボス会議での黒田総裁のマイナス成長発言、数えきれないほどのリスクが頻発しております。全部について調べるわけにはいきませんので、今回は2つだけ大きな問題を取り上げたいと思います。
共同通信やロイター通信によると、黒田総裁は、スイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のパネル討論会で、「日本経済は昨年第4・四半期にマイナス成長に陥った。これは主に2回の台風被害に見舞われたことに起因する。日本では自然災害の被害が確実に拡大している」と発言したと報道されております。
まず黒田・日銀総裁のマイナス成長発言です。黒田総裁は、日本の2019年10〜12月期のGDP成長率がマイナスで、GDPが縮小したことを認めた上で、その原因を相次ぐ台風が製造業部門に打撃を与えたことだとしています。前回の投稿でも日本のGDPが欧米や中国に比べて異常に低いことを指摘しました。それでもマイナス成長は想像もしておりませんでした。
空前の規模での金融緩和を6年以上継続してきたのに、台風の被害だけでマイナス成長に陥るとしたら、そもそも金融緩和では経済を成長軌道に乗せることができないことになります。
黒田総裁は、消費税を10%に引き上げたことの景気押し下げ効果については、言及していません。現在の日本経済で製造業ではなく消費が最大の景気を牽引するエンジンであることは周知のことですから、消費税や消費に触れないのは不自然です。
黒田総裁は対策として、さらなる金融緩和を示唆しているのです。これにはあきれ返りました。異次元の金融緩和は銀行の健全性を失わせ、特に地方の産業経済にダメージを与え始めています。日銀の国債買取も限界に達し、国債の引き受け手がなくなり金利上昇に見舞われれば国の財政も日銀の信用も失われ共倒れとなる危険性が高いのです。超金融緩和の出口はすでにふさがれてしまっております。ドル覇権を守るために続けられてきた日欧の金融緩和が限界にきていることは世界の常識です。
マイナス成長は、少子化・人口減少・老齢化を前提とすれば避けられないトレンドで、これ以上の金融緩和は副作用の方が高くなるだけです。