サンゴ礁の白化

ダーウィンの進化論完全崩壊? 「ヒトを含む90%の生物種は20万年前に同時に誕生」の誤解

この誤解を解くカギは

今回の研究結果が事実だとすればダーウィンの進化論にどんなインパクトを持つのだろうか? 国立環境研究所の外来生物研究プロジェクト・リーダーである五箇公一先生に聞いた。

「正直なところ、報道内容は随分曲解されていると思います。ミトコンドリアDNAの進化と種の進化を混同しているという印象です。今回得られた結果は、現存するミトコンドリアDNAの変異の90%が20万年以内に生じたものであるということであり、種が発生した年代ではありません」

ということは進化論を覆す内容ではないということだろうか? 生物学者X氏が詳しく解説してくれた。
「原論文を読みましたが、DNAバーコーディング技術のバックグラウンドについての記事で、報道内容とは少し違う印象を受けました。現生の種が生じたのが20万年前というよりも、現生の種の遺伝的多様性が生じたのが20万年という話です。たしかにそれなら納得がいきます。その時期に現生のすべての生物は氷期を経験していて、特に10万年から1万年前には最終氷期極大期がありましたから、多くの種はそこで大量に絶滅してボトルネック(遺伝的多様性の急激な減少)を起こしています。今回の研究は、この20万年~10万年前に生き残った種が現行の生物種の遺伝的多様性の基盤になっているということです。20万年ぐらいではDNA配列が2、3変わるだけですので、遺伝的変異もさほど起こりません。そういう意味では中間種もいないと言えるでしょうね。つまるところ、多くの系統地理学的な研究は今回の研究結果を支持するものであり、進化論には何の影響もありません」

 各報道では「生物種のうち、ヒトを含む全体の9割が20万年前~10万年前に出現したことが明らかになった」と報じられているが、これは誤解を招く表現だとX氏は言う。ここでの出現は「多様性の出現」という意味であって、生物種がいきなり存在したということではないと苦言を呈している。 以上 2018年6月22日 エキサイトニュースより


「カギ」は「共生・地球環境の変化・変異」にある。

共生は進化の重要な要因です。ウイルスの生物への共生は原始生命体の時期から存在します。時には宿主の生存を助けたり、あるいは宿主にダメージを与えたりしながら自己保存を図ってきました。その間に地球環境の変化が共生を助け、生物の多様性を高めたり、逆に共生を妨げ、生物の多様性を破壊したりしました。一方遺伝子は変異をもたらしました。

地球環境の変化と共生の関係を具体的な事例で説明します。

サンゴは動物か?植物か?

 答えは動物です。サンゴは,イソギンチャクの仲間(腔腸動物)に属し,これが沢山集まったものがテーブル状になったり,木の枝のように枝分かれした形をしたり,様々な形をした大きな集合体(群体)をつくっています。ただし,サンゴ虫の体内に,褐虫藻とよばれる植物が入っており,褐虫藻はもちろん光合成をしていますので,それも含めると,植物でもあると言えます。

 褐虫藻が光合成によってつくった有機物は,サンゴ虫の栄養分になりますが,通常,使い切れないほどの量なので,サンゴからはかなりの量の栄養分が排出されています。この栄養分はサンゴ礁の周辺にすむ魚などの栄養分になっています。サンゴは,魚たちに隠れ家を提供しているだけでなく,栄養分も与えているのです。

褐虫藻はサンゴ虫に栄養分を与える代わりに,サンゴの体内で魚などから守られ,サンゴ虫の老廃物を受け取っています。このように動物と植物がお互いに利益を受け合って生活しているのがサンゴ礁です。つまりサンゴ虫は褐虫藻と共生しているのです。

地球の7割を占める海が急速に変化している

日本近海の海の平均海面水温は100年あたり約1.1℃も上昇しています。(世界平均は0.74℃)

サンゴや魚類に与える影響が大きいのはともかく、温室効果ガスの影響は見逃せない。
温暖化と酸性化の影響。世界の海のph8(酸素イオン濃度)は約8.1の弱アルカリ性だが—-

海による二酸化炭素の吸収>地球の温暖化にはプラスだが反面海自体のPhの変化は海洋生物の変化をもたらす(サンゴやプランクトン)>魚類の収穫への影響(大型魚類の収穫減)&更なる海洋の酸性化>二酸化炭素吸収率の低下>海洋生物の多様性の破壊。これは壮大な負の悪循環とも云うべき自然破壊現象です。

日本最大のサンゴ礁(石垣・西表島海域)日本が誇る「生物多様性の宝庫」サンゴの白化現象6~9月にかけて海水温の急激な上昇。このサンゴの白化はサンゴの死を意味します。「海の熱帯雨林」に迫る危機。サンゴと褐虫藻の長年かけた共生関係が崩れているのです。

オーストラリアのグレートバリアリーフ、インド洋のモルディブ、インドネシア近海など40ヶ所以上のサンゴ礁で大規模な白化現象が起きている。反面オニヒトデが大増殖する。サンゴの感染症、ロドバクター系の細菌が原因「回復不可能」、赤土の被害や台風の被害が重なる。「生物多様性の危機」が地球規模で、海で起っています。

IPCCが2019年にまとめた「海洋・雪表圏特別報告書」では2100年には世界平均海面水位は1986~2015年に比べて最大で1.1m上昇する可能性がある。と予測しています。

有毒プランクトンを食べたシラスに似た小魚や貝類が有毒化する。貝が毒化しているかは見た目ではわからず加熱処理をしても毒性は消えません。高知県「カキのDNA鑑定」毒性の強い南方系カキの日本進出、マガキの幼生に有害種が混ざる事態が生じカキ養殖に影響を与え、カキの採取不良の心配が起こっています。日本のカキ産地では正体不明の謎の危険なフグの脅威も迫っています。

話は変わりますが、本来動物を宿主として共生していたウイルス、その感染症の蔓延もこれに似たものを感じます。


前の投稿でご報告した ワシントン大学のIHME(保健指標評価研究所)の予測が欧米についてはほぼ的中しているようです。

今朝のニュースで驚きましたがアメリカでは7万の感染、イギリスでも1万前後、フランスに至っては3万超でパリ夜間外出禁止、オーストリアでも16日、1日の感染者数が1700人を超、イタリアでは16日に新たに確認された感染者が1万人を超え、ドイツでも16日に1日の感染者が7300人を超、ベルギーでも今月12日までの1週間の新たな感染者数が1日平均で5900人余りと、前の週の2倍近くにまで急増しています。

WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は16日の定例の記者会見で、「北半球が冬に近づくなか、感染者の数は世界的に増えているが、特にヨーロッパでは顕著だ。先週、ロシアやヨーロッパで新たに確認された感染者の数はことし3月のピーク時よりも3倍近く多い」と述べました。

日本は幸いにもワシントン大の予測が外れています。しかし、これから寒くなり湿度が低下してきますと、第3波が来るかもしれません。欧米の感染爆発、こんな時期に入国制限の緩和とは、いくら五輪のためとはいえ感覚が疑われます。

ウィズアウトコロナへ 〜経済を動かし日常を取り戻すために【児玉龍彦×金子勝 新型コロナと闘う】2020・10・13
東京大学先端技術研の児玉教授の動画が発表されましたので掲載しておきます。特に免疫、抗体、変異、検査、経済との両立の条件など最近の研究結果について分かりやすく説明されています。