リーマンショックとの相似点と相違点

厚生労働省資料より

たまたまステイホームを機会に書類の整理をしていたら、2008年のスクラップブックが見つかりました。当時の新聞の切り抜きを見ていたら2008年1月・2月の記事の切り抜きが出てきたのです。リーマンショックがマスコミの話題となったのはちょうどこの頃からだったようです。

1月5日付けの新聞には1面に「NY株一時200ドル安、米失業率5%に悪化」の見出しがあり、その下に東証急落の小見出しが目につきました。「東京株式市場は今年初の取引となった4日の大発会で日経平均株価が7年ぶりに前年末を下回り、大発会では過去最大の下げ幅を記録した」と書かれていました。08年2月9日には内閣府の調査の発表があり、「街の景況感旧冷却」「現状判断、下げ幅最大4.8ポイント」の見出しが躍ったのです。

その後、世の中が呆然自失となり、具体的に手が打てたのはようやく9~10月に入ってからだったようです。9月17日は「日米欧、35兆円供給」「リーマン破綻、市場安定へ協調」の見出し、10月20は「米で緊急サミット」「G8や新興国」との記事、サルコジ大統領は「世界的危機には世界的な解決策が必要だ」と、危機の震源地ともいえる米ニューヨークでの開催を提案、両大統領は協議の結果米国での開催を決めた。緊急サミット後も、世界の他の指導者も交え連続サミットを、欧州などでの開催も視野に開くことを声明した。

世界銀行は12月10日、09年の東アジア全体の実質国内総生産(GDP)が、08年の前年比5%~7%に低下するとの報告をまとめた。同銀行のビクラム・ネル経済政策担当局長は「金融危機は途上国の貧困層にとっては、”生命の危機”でもあると強調した。

以上が新聞の切り抜きからたどったリーマンショックのながれです。

後始末は日本では意外な方向に向かったのです。2006年小泉政権は構造改革を掲げ「改革には痛みが伴うもの」とし、新自由主義的「改革」に舵を切ったのです。その後政権が変わっても、一貫して新自由主義政策だけは変わりませんでした。


生活者、家計セクターから生産者、企業セクターへの所得移転

長期に及ぶ預金ゼロ金利、雇用・労働の破壊による賃下げ、結果としてより深刻な家計所得の削り取り、すなはち家計分野からの膨大な「所得移転の構造」は改革に向かうどころか逆に景気回復は名ばかりで、一層深刻化し、構造化された。

景気回復の証左として政府のあげる企業業績向上の内実は肥る企業部門、細る家計部門と同意なのであり、従って底の浅い国内消費市場に好転の兆しは見えない。景気回復が逆に国内需要の足腰を挫き、経済の対外依存度を一層高めるという悪循環を生みだした。これは持続可能な回復とはいいがたい。

大企業の異常なほどの増益は、中小企業や家計部門への恩恵の波及効果を遮断したからこそもたらされたものであり、トリクルダウンの神話は見事に破られた。新自由主義政策のもたらす「矛盾をはらんだ改革」の帰結が貧富の格差拡大であった。

分断・対立・競争を原理とする「競争セクター」に変え、連帯・参加・協同を原理とする「共生セクター」に軸足を移す新たな社会への模索が始まる。

(この文は2008年の新聞切り抜きファイルの中に見つかったもので、私の鉛筆書きのメモでした。12年後の現代にも通ずるのではないかと思いここに転載しました)


リーマンショックとの相似点は低金利政策は大企業やお金持ちをますます肥やし、中小企業や中産階級を含む弱者がますます細る傾向。トリクルダウンは幻想、「新自由主義」「改革」は弱者切り捨てにつながり消費の減退を招き景気回復を遅らせ長引かせる。

新型コロナウイルスはこの傾向を増幅させました。トップの画像はここ一週間の変化を表し、特に欧州の感染急増は目を疑うものがあり、日本のマスコミはほとんどこの状況を軽視している状態です。現地の危機感は想像に絶するものがあります。

バイデン氏は最後の候補者討論会で「現在も一日平均6万人が感染し、1000人が死亡する現実」を警告しました。その後27日の報道では、一日で8万人の感染急拡大が報じられました。フランスの1日の感染者は42000人を超え、累計では104万人と急増しております。一方スペインのサンチェス首相は23日のテレビ番組で「実際の累計感染者数は既に300万人を超えている」と発言、正しい集計ができていなかったと反省を表明しました。

ジュネーブ発の共同によれば、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は23日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症が欧州などで急速に拡大している状況を巡り「パンデミックは特に北半球で重大な岐路にある」と述べ「いくつかの国は危険な道を進んでいる」と懸念を示しました。

更にテドロス氏は「発展途上国では酸素吸入用の酸素ボンベの供給が5%~20%しかまかなえていない」と危機感を表しました。

本部がスイスのローザンヌにあるIOCはこの異常を身近に感じ取っているはずです。

すべてを五輪に賭けていた日本政府は、もしIOCが中止を決定したら、すべての経済政策が破綻してしまうほどの打撃を受けることになるでしょう。

「自立・共生・公助」が一層むき出しになってくるでしょう。公助に頼れなくなり生活は一層苦しくなります・

今こそ、分断・対立・競争を原理とする「競争セクター」に変え、連帯・参加・協同を原理とする「共生セクター」に軸足を移す新たな社会へ転換しないと再起不能となるのではないかと心配です。