今回は、危機管理の専門家・川口拓氏の提言を二重カッコ内に示し、コロナショックと他の自然災害が重なった場合の「自助・共助・公助」について触れてみたいと思います。
自助無くして共助なし、災害にあって身を守る事が出来なければ他人を救うこともできない、更に生存して初めて公助が受けられる。このような危機管理の基本原則に基づき標題の問題に取り組んでまいります。

先ず、前の投稿でもお伝えしましたが、コロナ禍と経済危機は別物ではなく、正に「前門のオオカミ後門のトラ」なのです。これは時期的にもどちらが先でどちらが後と云う関係ではなく複雑に絡み合って現れる一体の危機なのです。
従ってそれ自体が複合・多重危機と云えるのですが、上記に示した自然災害が重なった場合のことを考えておくことは、避けられない重要課題なのです。

【インフラが失われた都市災害によって破壊された大都市は砂漠でのサバイバル並みに生き延びることが難しい地獄に変わる】

東日本大震災当日、首都圏だけで515万人に及ぶ帰宅難民が発生した事は記憶に残っているでしょう。交通インフラの停止によって水や食料が品切れとなり、避難所は密の状態となりました。

大災害でデマが広がるばかりでなく、【災害後の都市では「人」がリスクになり得るのだ】と川口拓氏は指摘します。
民度が高いと云われる日本でさえ災害時には人心が荒れ、犯罪が発生するのです。ふとしたきっかけで無法状態に入ることがあります。コロナ禍の諸外国にもこんな事例が散見されます。

内閣府の中央防災会議は都市を大災害が襲った場合のリスクを表で示しました。30項目もありその数の多さには驚かされました。

一例を挙げれば、人的被害の項目では、
① 暴徒化
② 性犯罪
③ デマ
が挙げられています。

その他の被害の項目では、⑯ 複合災害が挙げられています。

川口拓氏は【生き延びるためには「想定外を想定せよ」と指摘し、予断や断定を避けなければならない】とアドバイスしておられます。これは先の投稿で述べた「すべての情報は頭から否定するな、そのうえですべての情報は鵜呑みにするな」と云ったことと相通じるのではないかと思った次第です。

更に同氏は危機管理の鉄則として貴重な考え方を教えてくれています。
S top (止まる)
T hink (考える)
O bserve(観察)
P lan(計画)

【これらの危機管理は自然に備わっている力を生かすことで、危機に直面して、体を落ち着かせるのがStopで頭を落ち着かせるのがThink、それがなければ観察や計画は正しくできない。】と教えています。

人が生きるために必要なものは5つあり、空気・シェルター(体温保持)・水・火(光と熱)・食料です。健康な人なら、食料なしでも3週間は生きられます。
従って危機管理では、まず一番に呼吸の確保、次に体温保持、水、火(光と熱)の確保を優先せよ。そのうえで食料の確保だ、との指摘も参考になります。

サバイバルには【ゆっくり動き、ゆっくり考え、慌ててはいけない。そしてサバイバルは日常の生活に近ければ近いほど成功と云える。可能であれば家が最高の避難所だ。】これもコロナ禍での複合災害対策として大いに参考になりました。

前回の投稿ではコロナショック下での株高について触れました。コロナバブルは金融バブルです。日銀が株式の投資信託(ETF)を買い支える官製相場はいつまで続くでしょうか?。

金融の世界はインフレ
産業の世界はデフレ

これが日本に限らず世界のコロナショック下の経済の実態です。これは隠れていた矛盾がコロナで表面化した現象だと云えます。結果としてはコロナショックによってますます格差が拡大し、倒産・失業が頻発します。このことはデフレ要因であることは明白です。私は金融の世界のインフレ(株高)は短命に終わると予測しております。

次回は再び、新型コロナウイルス・Covid-19の今後の動向について書く予定です。

今回は、上の動画「全員検査でコロナ克服・検査と治療のシステム構築~前をむいて進むとき【新型コロナと闘う 児玉龍彦×金子勝】」が6月3日に発表されましたので、前回ご紹介した精密医療の体制が急速に固まってきた姿を、引き続きご報告します。

先週の解説をお読みいただいた読者の皆様は既に予備知識をお持ちなので、今回は要点のみの解説にとどめさせていただきます。

世界は精密医療(プレシジョン・メディスン)に向かっており、それを裏付ける精密な抗体検査がキーテクノロジーとなっております。精密な抗体検査についてはその後、具体的進展があり、「認定特定非営利法人・新型コロナウイルス抗体検査測定協議会」が発足するに至りました。

前回も解説いたしましたが、精密抗体検査機を導入済の東大先端研を始め、6団体のメンバーを中心として協議を進めておりました。
その後東大アイソトープセンター、ひらた中央病院なども加わり、先端研の児玉龍彦氏が協議会のアドバイザーとなって上記協議機関が設立されました。

新たに民間大手検査会社・LSIメディアも精密抗体検査機を導入する動きとなり、飛躍的に処理能力が上がる見込みです。

プレシジョン測定は定量法とノイズ除去による「目的ある測定」「重点地域と重点集団に対する全数検査」を可能にしました。

精密(プレシジョン)の更なる進展を受けて、金子勝教授から緊急事態宣言解除後の社会経済・生活復元の新しい考え方の提示がありました。精密(プレシジョン)はこの面でも共通性があり、前提条件として「集中」から「分権」への政策転換が必要だとされております。

権限を中央に集約する権威主義はコロナと闘う政策には不向きで、現政権にみられる「政策決定の不透明さ」「議事録もない非民主的な運営」「利権に走る、中抜き」「官僚の非効率による給付の遅延」など、既に数々の問題が露呈してきております。

思い切って地方分権に舵を切り、権限も財源も大幅に地方自治体に移すべきです。地方自治体に権限と財源を移すことにより政策面でも「精密(プレシジョン)」が進むのです。分権による「見える化」の効果として、前に挙げた縦割りの弊害が取り除かれ、政策実施のスピード感もでてくるのです。

児玉先生と金子先生のこのような展望を総括して「分散型の社会」と称し、コロナに勝つ戦略として必須条件となってきております。

以上の提言は児玉龍彦氏と金子勝氏の連携(科学者と経済学者の連携)があって初めて生まれたコロナ後までを展望した新しい見解です。動画では詳細に語られていますので、特に以上の点に注目してご視聴いただけたらと思います。

追記:一つ提案があります。児玉先生の話の中で、検査結果では陰性が圧倒的に多いことを根拠に、「20検体をまとめて検査して陽性が出たグループだけ再検査すれば、検査コストがケタ外れにに安くなる」とのことでした。この検査方法の名称を勝手に考えました。「パッケージ検査」としてはいかがでしょうか。

その後調べてみたら品質管理などでこの言葉は既に使われています。意味は違うかもしれませんが、バインドより近いかもしれません。「パッケージング検査」がより近い意味合いを持っています。

次回は、新型コロナ下の経済について集めた情報の分析をできる限りお伝えしたいと考えております。