今回は引き続き、兪 炳匡(ゆうへいきょう)教授のプランBについて前回、語り切れなかったことを中心に述べてみたいと思います。図表が多く掲載されていますが、本からは転載できませんので取あえずデモクラシータイムスから転載させていただきました。デモクラシータイムスの金子勝教授の動画は末尾に掲載しておきます。

プランBは、プランAが日本の現状になぜ合わないかを理解することが出発点となります。
前にも述べたようにプランAはアメリカ型成長戦略です。これに対しアベノミクスの失敗はあまりにも厳しい現実をもたらし、極論すれば再起不能の状況に陥っているのです。

再起のために、もしプランAで行くならば準備段階だけに10年はかかると云うのが現実です。この現実は日本の為政者をはじめ野党や国民全体が無知であることを自覚する必要があるのです。それにはまず世界の中での日本の国力の現状をデーターで示す必要があるのです。まず要点を箇条書きにします。

1.格差の拡大は世界水準から大きくかけ離れてきた

2.アベノミクスの主要政策は円安誘導だった

3.経済成長か、貧困撲滅による国内需要喚起か、どちらを選択するか

4.女性の社会的地位の低さは成長を妨げる大きな要因

5.人種差別、人権意識の低下はグローバル人材の獲得を妨げている

6.エネルギー政策が世界水準から二周遅れとなっている

7.大都市集中、地方切り捨ては、災害に弱い国につながる

8.財政破綻は長期金利上昇とともに目前に迫ってきている

9.新型コロナウイルス感染対策は失敗の連続だった

まだまだ問題点は多いが世界との比較で今や韓国・台湾に負けている指標が数多く出ている。アベノミクスの失敗を率直に認め国の形を根本的に立て直すことが急務です。(以下は著者の言葉に私の考え方を交えて書いたものです。極力著者の意図に反しないよう配慮したつもりです)

この期に及んでアベノミクスの継承などを政策の根幹とする政党はこれ以上存続することは出来ない。変わるべきです 、出来なければ変えるべきです。

以上の箇条書きについて要点の細部に触れてみたいと思います。

2.の円安誘導について、経済成長のため輸出の促進に偏った経緯があります。もう少し国内需要を喚起するべきだったのです。無理な輸出拡大はたちまちにして発展途上国との価格競争に陥り、優位性を示そうとすればするほどドツボに嵌って行ったのです。原発の輸出はイギリスをはじめ全てに失敗しました。武器輸出もそうです。

円安誘導の主要手段は為替介入でした。為替介入の累計額は2003年~2004年にかけて35.2兆円でした2003年度の日本の税収金額が43.3兆円だった事と比べるとその額の異常さは明らかです。
FRBのグリーンスパン議長の警告により為替介入を余儀なく停止した日本国政府が考えた次の一手とは「米国債の多額購入」でした。一時は米国債保有額が中国に次いで2位までいったあげくの果て、これまた米国企業の輸出競争力を弱める危惧から壁に突き当たったのです。

日本政府は明治時代から一貫して「政策の無謬性」を前提とし「お上の言うことに間違いはない、失敗はあり得ない」と云う姿勢です。つまり円安政策の失敗を認めないのです。

次に4.5.の差別の問題です。2019年のWEFの「男女平等ランキング」においては先進G7、7か国では最下位となっただけでなく、中国106位・韓国108位よりも低いランクに低迷したのです。

プランBでは「男女平等のランキング低迷は負の遺産」だと主張しています。
日本の圧倒的に男性を中心としたエリート層が、人口の半分を占める女性を構造的に排除し、「高い社会的地位に就く競争」に参加できる集団のサイズを小さくしていることを示します。このような排他的行為は、先進国の水準に合わないばかりでなく、国力を落とす大きな要因となっているのです。

同様に、外国人労働者に対する自分勝手な人権無視・狭量な政策も出生率低下・人口減少にたいするマイナス要因となっているのです。

6.のエネルギー政策についても環境問題とリンクして後進性を遺憾なく表面化させています。この件についてはあらためて今後の投稿でとり上げるつもりです。7.の地方自治再建、地方創成との関係も密接にあることをここでは指摘しておきます。

米国は50週に権力を分散させることによって自然災害のリスクや感染症のリスク低減を図っております。

9.の新型コロナウイルス感染対策については危機管理のフェーズが全く変わってきたことを指摘します。

最近のデーターで他の全国都道府県の感染者数が激減してきた状況の中、北海道が増加に転じていることは見逃せません。

新型コロナウイルス感染対策については諸説入り乱れどれが真実か分からなくなってきている事は前の投稿でもお示ししたところです。今回は自己防衛のため最も重要な注目点に絞って研究結果を記したいと思います。

減ってきた原因は、季節要因かウイルス自体の弱毒化かの問題については先の投稿で詳しく説明しましたが、もっと分かりやすく言いますと、「PCR検査の激減」「デルタ株の勢力が極限に達しゲノムがエラーを起こすエラーカタストロフフェーズに入ったこと」「人間の環境対応要因」などが複雑に絡み合った事が原因として挙げられます。

重要なことは今後どうなっていくのかです。つまり予測です。一番困難なことですが、私としてはあくまでも自己防衛を中心に考えております。

ゲノムのエラーは新しい変異株が現れるまで続きます。決してデルタ株のまま再拡大することはありません。この点が他の識者と見解を分かつところです。例えデルタ株プラスと称してもそれは異なる変異株と見るべきです。そうでないと対策を誤ります。
新しい変異株を見つけそれに対処するにはあくまでもPCR検査の徹底拡大が必要です。抗原検査では変異株には対処できないのです。PCR検査の必要性は従来の考え方と異なります。従来の考え方では新しい変異株を掴み(発見し)対処することは出来ないのです。

昨今の検査数を東京都で見ますと10月18日の感染者数はわずか29人です。検査件数は3857件です。人口10万人で世界の検査数を比較しますと日本の検査数は圧倒的に少ないのです。欧米の水準から比べますと東京都の検査数は少なくとも一日2万5千件は必要です。これでわかるよう東京の検査数は欧米の6分の一以下です。

これでは新しい変異株が出てきたらお手上げです。英国では一日の検査能力を100万人分に上げているという報道もあるくらいです。北海道の感染者が前日比で増加に転じた報道は無視できないでしょう。東京でも湿度が低下し乾燥状態の中で空気伝染による感染が増加する時期を12月~3月と予測することは難しいことではないでしょう。

何よりも自分の身は自分で守るしか方法はないでしょう。自己責任だと云う政府には頼っておられません。割り切って言えば政府の政策は自分にとって必要な部分だけ摘まみ食いをしそれ以外は自分の身は自分で守ると云うことです。


 


2021-10-12

今デルタ株の感染力が急激に衰え、一時コロナは収まったと都合の良い方に解釈して緩和策を進める動きが政府の方から出てきています。

デルタ株の感染力があまりにも強くまた速度も異常に高かった事から、弱毒化・感染力の衰えが始まったという説があります。これはゲノムのコピーミスが原因ともいわれております。

更に季節要因による変化 が起きているのだと云う説もあります。

両者ともに一面的な見方で、おそらくそんな単純なものではなく人間の行動変容も伴った複合的な要因だと思われます。そして「感染予測システム」の開発が必須です。

これを読み解くためにある専門家の次のような発言をとり上げたいと思います。
「デルタ株の感染は季節によって変化する。つまり温度の変化、湿度の変化が影響すると考えられる」。

ここで湿度の変化をとり上げている点は確かにその通りだと思います。しかし云い足りなさを残念に思います。「湿度の影響は具体的には飛沫感染か空気感染かに影響を与えるのです。空気感染はエアロゾル感染と言い換えても結構です。接触感染・飛沫感染と比べ物にならないほど空気感染の感染力は強いのです。当然この感染力は湿度によって大きく変化することは容易に想像できるはずです」これを付け加えないと説得力は半減するでしょう。

与党の政治家やそれに追従する専門家たちが最も忌み嫌うのが「空気伝染」と云うワードです。湿度との関係であれば0.3µmの粒子ならエアロゾルと云っても構いません。彼らにとっては「空気伝染」と云うワードは大変都合が悪く、どうしても排除したくなる気持ちは分かります。しかし、欧米では「空気伝染」は有名な科学雑誌の論文にも出てくる当たり前のワードなのです。

まず以上の情報を抑えたうえで、もっと重要な科学的見解に触れなければなりません。
それは「強力な変異株は感染が広がると、ある時点で弱毒化・感染力の衰えが始まる」いう説で、これはゲノムのコピーミスが原因だと云われます。冒頭の図をご覧ください。

この説の根拠はノーベル賞受賞者のマンフレート・アイゲン氏が唱える「ウイルスの自壊メカニズム・エラーカタストロフ」にあります。これをもとに東京大学先端技術研の児玉龍彦名誉教授が書いた図が冒頭の図です。

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私は先にご紹介した「日本再生のためのプランB」の著者・兪 炳匡のコロナに特化した末尾の動画に注目しました。

兪 炳匡(ゆう へいきょう)医師、神奈川県立保健福祉大学イノベーション政策研究センター教授。1967年大阪府生まれ。93年北海道大学医学部卒業。93年~95年国立大阪病院で臨床研修。97年ハーバード大学修士課程修了。(医療政策・管理学)。2002年ジョンズ・ホプキンス大学博士課程修了(PhD・医療経済学)。スタンフォード大学医療政策センター研究員、米国疾病・管理予防センター(CDC)エコノミスト、カリフォルニア大学デービス校准教授などを経て20年より現職。著書に『日本再生のための「プランB」 医療経済学による所得倍増計画』、『「改革」のための医療経済学』など。

同氏は「感染予測モデル」の研究開発の専門家です。予測モデルは全米で20もあります。日本には京都大学の西浦教授の予測がただ一つの政府が頼るモデルです。

兪 炳匡先生は少なくとも日本列島は長いので主要都市別にこの予測モデルが必要でアメリカの20程度は必要ではないかと云っておられます。肝心な予測モデルさえ世界水準からはるかに遅れていることを嘆いておられます。但し前回に申し上げた世界規模のモデルが巨大データーベースの完成を待って完成し万能ワクチンが出来るまでの話です。

また、地域別予測システムは世界規模の巨大データーベースの構築にも役立つものです。
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もう一つ日本が世界水準から遅れている問題はPCR検査です。PCR検査の拡充は以前考えられていた目的とは全く次元の異なる新たな目的への対応が迫られているのです。

デルタ株のゲノムのコピーミスによる弱体化の後に現れる新株は前の株(デルタ株)そのものではありません。「デルタ株プラス」かまたは全く新しい変異株です。

それは何を意味するかといえば、このままでは新株には対応できなくなると云う事です。

PCR検査を充実・拡大することによって新株をつかみこむことによって、はじめて予測できるようになるのです。
政府委員の岡部氏は未だに抗原検査を推奨しています。これこそ世界水準から大きくずれている証左です。英国では一日に100万人の検査能力を維持しております。

岡部氏は検査の費用を抑えることを主目的としてそれによって検査能力を拡充しようとしています。ところがこれでは検査の精度と特異度が分からないのです。

PCR検査は図のように精度と特異度が正確につかめ、そのコストも明確になるのです。目的に収まる範囲のコストはPCR検査検査で5000円/件を実現しております。コスト面でも抗原検査に拘る理由は見当たりません。

日本のコロナ対策の後進性はすべて国際比較をすれば明確になるのです。

コロナ対策ばかりでなくあらゆる国際比較から日本の政治・経済の遅れが証明されるのです。与野党ともに現実を見るべきです。

ワクチンの接種率、治療薬の開発状況などもこのテーマには必要な情報ですが、それは過去の投稿で紹介しておりますので参照してください。

最後に100万人当たり死者数が米国やインド大阪が多かった時期があると云う驚くべきデーターを載せておきます。

8年間の強権政治が如何に国力を落としてきたか、米国式のプランAでは日本は救われません。プランBとは何か、次回は兪 炳匡教授の真剣な提言に耳を傾け、再度プランBの紹介をしたいと思います。

下の動画には多くの世界比較データーが記載され詳細な解説と日本の医療がいかに遅れているかを明らかにしている。