ワクチンのデリバリーを阻むベンダーロックイン

政府はコロナとの闘いをワクチン接種にかけた。9日の党首討論で首相は「必要な国民、希望する方すべてを10月から11月にかけて終えたい」と述べ国民全員への接種完了のめどを初めて明らかにした。

簡単に達成できる目標ではないので、そのハードルをあげておく。

1.契約通り入荷するか
2.接種のチャンネルを多様化して企業やかかりつけ医、学校での接種等が複雑に入りくんできた
3.ワクチンの温度管理等の取り扱い条件のばらつき
4.医師・看護師等の医療従事者の配置の変更・調整
5.ある接種場所で余剰ワクチンが生じた場合の処置
6.子供を含む若年層への対応

入荷が予定通りとしても、その他の問題はワクチンのデリバリーがうまくいくかにかかっており、デリバリーがうまくいくかどうかは、全国的データー管理の問題つまり「ベンダーロックイン」への対応に集約される。

そこで「ベンダーロックイン問題とはどういうことか?」から解説することにする。


以下はIT用語の解説に詳しいジャパンシステムからの引用です

ベンダーロックインとは「ある特定のメーカーや販売会社がユーザーを自社製品で囲い込むこと」です。まず、囲い込む側であるベンダー側の論理からみた時に「なぜ囲い込むのか?」というと、「自社の顧客が競合他社に奪われないように参入障壁を高めたいから」です。我が社でなければいけない理由が強ければ強いほど顧客は競合他社に移ることが難しくなります。

日本の多くの方々がイメージするベンダーロックインはコーポレイトロックインのことだと思います。つまり、テクノロジーはその都度の最新技術や最新製品を使い、製品や技術が違えども結局は同じベンダーから購入せざるを得ないことです。なぜそうなるかと言えば、自社の業務や自社のルール、やり方について一番良く知っているのはそのベンダーだということだからです。ですからメインフレームやオフコンの時代にA社とお付き合いしていれば、時代がオープンになるともクラウドコンピューティングになろうとも、A社とおつきあいし続けるということになります。

以下はForesightからの引用です

特定ベンダー、つまりIT(情報通信)会社にシステム開発を依頼した場合、その会社の独自仕様に依存した設計になってしまい、他ベンダーのシステムへの乗り換えが困難になることを言う。デジタル庁の創設など霞が関のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化に取り組もうとしている日本政府が直面しているのが、このベンダーロックイン問題だ。

入札の結果、同じ仕様で価格の安いベンダーに発注することになるが、ここで「ベンダーロックイン」が大きな意味を持つ。最初の納入価格は、落札しなければ話にならないので、ライバルに負けない低価格を提示する。いったん落札してしまえば、保守管理費が毎年入ってくるので、そこで取り戻せばよい。それがITシステム開発の世界の一種の「慣行」として定着している。

霞が関だけでなく、日本全国の地方自治体も状況は同じだ。

 首都圏のある中核自治体の場合、大手ITゼネコンに年間数十億円の保守管理費を支払っている。「役所の幹部にITの専門家がいないので、業者の言うがままになっています。自治体によっては外部からIT人材を中途採用していますが、なかなか機能していないようです」とその自治体の幹部は話す。

つまり、ITシステムを構築する力を持つようなIT専門家がいないので、すっかり業者任せになっているわけだ。数年に一度、システム更新が必要だと業者に言われ、多額の追加投資を余儀なくされることも珍しくない。高いから他の業者に相見積もりを取ろうにも、「ベンダーロックイン」でシステム更新を他の業者がやることが事実上できなくなっている。

もちろん、発注側にシステムに通じた人材がいれば、「ソースコード」と呼ばれるプログラム言語で書かれたコンピュータープログラムを見てシステムの内容を把握もできる。だが、そのソースコードを合わせて納品させる契約からして、結んでいない例も少なくない。


公正取引委員会は当然このこと(ベンダーロックイン)を問題視して自治体を含む1800社に対し調査を開始した。
政府もデジタル庁を設置して対応始めたようだが、これが新しい利権を生む結果となりかねないと云う懸念もぬぐい切れない。

それぞれの対応が滑り出したものの、先に述べたような根深さもあり早期に解決することは期待できない。

今回は変異株ウイルスについては解説できなかったがこれも含め次回に対応策を探りたい。

最後に次回の総合的解説の参考資料として、自民党 異端の本流 村上誠一郎(自由民主党)【山田厚史のここが聞きたい】の動画を掲載しておくので前もってご視聴ください。